新株発行差止仮処分、東京高裁決定の抜粋

新株発行差止仮処分命令申立に関する東京地裁の却下決定に対し、創業家らがなした即時抗告についての東京高裁の抗告棄却決定のうち、原決定の判断を実質的に変更した部分について、決定書の【当裁判所の判断】を抜粋したものを公開いたします。
なお、マーカーは当職が引いたものであり、決定書には引かれていません。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,本件申立てはいずれも理由がないからこれらを却下するのが相当であると判断する。その理由は,次の2のとおり当審における抗告人らの主張に対する判断を付加するほかは,原決定の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」及び「第4 結論」に記載のとおりであるから,これを引用する。【省略】
2 当審における抗告人らの主張に対する判断
⑴ 【省略】
⑵ 【省略】公募により新たに株主となる者においても,そのほとんどが相手方経営陣の提案に賛成するとは限らないのであるから,第三者割当増資の場合に比して相手方経営陣に反対する株主らの支配権を減弱させる確実性が弱いといわざるを得ず,そうであるとすれば,月岡社長ら相手方経営陣の全部又は一部に株主を巻き込んだ相手方の支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したものと一応認められるとしても(【省略】),当該目的が新株発行の唯一の又は主要な目的であるか否かを判断するに当たっては,公募増資の上記のような制約ないし事情を考慮する必要があるというべきである。
 【省略】
⑶ 【省略】そして,本件新株発行後,直ちに株主総会が開催され,昭和シェルとの合併が議題になることをうかがわせる疎明資料がないことは,前記1⑴のとおり原決定を訂正して説示したとおりである。
 【省略】
⑷ 【省略】
3 よって,原決定は相当であり,本件抗告はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり決定する。

新株発行差止仮処分、東京地裁決定の抜粋

創業家らが申し立てた新株発行差止仮処分命令申立事件に対する東京地裁決定のうち、判断の枠組みと個々の争点に関する裁判所の判断の結果について、決定書の【事実及び理由】を抜粋したものを公開致します。創業家らの即時抗告を棄却した東京高裁の決定も、基本的には東京地裁の判断を踏襲しています。
ご覧になられた皆様が、出光興産経営陣と創業家との紛争の実態の一部をご理解頂くための、一資料として頂けますと幸いです。
なお、マーカーは当職が引いたものであり、決定書には引かれておりません。

第1 申立て
債務者が平成29年7月3日の取締役会決議に基づいて現に発行手続中の普通株式4800万株の発行を仮に差し止める。

第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,債務者の株主である債権者らが,公募増資の方法で行う前記第1記載の普通株式の発行(以下「本件新株発行」という。)は「株式の発行(中略)が著しく不公正な方法により行われる場合」(会社法210条2号)に該当し,これによって債権者らが「不利益を受けるおそれがある」(同条柱書)として,本件新株発行を仮に差し止めるよう求める事案である。

2 前提事実
【省略】

第3 当裁判所の判断
1 本件追加主張について
【省略】

2 認定事実
【省略】

3 本件新株発行は「著しく不公正な方法」(会社法210条2号)により行われる新株の発行に該当するか否かについて
(1) 会社法210条2号所定の「著しく不公正な方法」による募集株式の発行とは,不当な目的を達成する手段として株式発行が利用される場合をいうと解されるところ,会社の支配権につき争いがあり,現経営陣が,支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ,もって自らの支配権を維持・確保することなどを主要な目的として新株発行をするときは,当該株式発行は不当な目的を達成する手段として行われる場合に当たるというべきである。

(2) そこで,本件において,会社の支配権につき争いがあるか,債務者経営陣は自らの支配権を維持・確保する目的で新株発行をしたかにつき検討する。
ア 前記前提事実及び認定事実によれば,もともと債権者らの保有株式数は合計で発行済株式総数の約33.92パーセントであって,債権者らが一体となって議決権を行使すれば,それだけで株主総会の特別決議案件を否決し得る状況にあったこと,債権者らと月岡社長ら債務者経営陣との間においては,株主総会の特別決議を要する昭和シェルとの合併(会社法309条2項12号,783条1項,795条1項,804条1項)を前提とする経営統合の当否について,激しい意見の対立があり,平成27年12月以降協議を継続してきたが,債権者ら代理人鶴間弁護士が,平成29年3月同経営統合に反対する旨を宣言し,同年6月5日債務者の株主に対し,同月29日に開催される定時株主総会において月岡社長ら5名の取締役の選任に反対するので賛同するよう要請する書簡を送付するに及んで,対立は決定的となったこと,同定時株主総会においては,鶴間弁護士が選任に反対する意向を示していた5名の取締役の選任議案は,約61パーセントの賛成をもって可決されたこと(その余の債務者取締役7名の選任議案は,98パーセント超の賛成をもって可決された。)が認められ,これらの事情を総合すれば,本件においては,昭和シェルとの合併を前提とする経営統合の当否を中核として,債権者らと月岡社長ら5名の取締役とは,それぞれを支持する株主を巻き込んで,実質的に債務者の支配権を争う関係にあったものと一応認定するのが相当である。

イ さらに,前記前提事実及び認定事実によれば,債権者らは,特別決議事項である合併が議案となった場合には,一体となって議決権を行使すれば,それだけで同議案を否決できる立場にあったこと,債権者らは,第102回定時総会に向けて債務者の株主に対し,月岡社長ら5名の取締役の選任議案に反対するよう要請する書簡を送付するなど,昭和シェルとの合併を前提とする経営統合に一貫して強く反対してきたこと,債務者経営陣は,自らが選任された同定時株主総会の直後である平成29年7月3日本件新株発行を決議し,同月12日にはその払込期日を同月20日,発行価格を2489.36円と定めたこと,本件新株発行により,債権者らの合計持株比率は最大で約26.09パーセントまで低下すること,債権者らが同持株比率を維持するためには,本件新株発行の際,最大で約470億円を払い込まなければならず,当該払込みをしなければ,少なくとも本件新株発行直後において,債権者らの合計持株比率は現在よりも相当程度低下することになること,債権者日章興産,同文化福祉財団及び同美術館の流動資産及び現預金は,公表されている資料によれば約98億円であり,これと上記約470億円の資金との差額を準備することは,個人にとっても法人にとっても通常困難又は不可能であること,月岡社長ら債務者経営陣は,既に多額の出捐をして,市場株価よりも高い金額で昭和シェル株式を取得しており,昭和シェルとの合併を前提とする経営統合が成立しなかった場合には,当該取得を決議した取締役らが責任追及をされる可能性もあることが認められ,これらの事情を総合すれば,月岡社長ら債務者経営陣の全部又は一部には,本件新株発行をするに当たり,現時点で昭和シェルとの合併を前提とする経営統合に頑強に抵抗する債権者らの持株比率を相当程度減少させ,その後の債権者らとの交渉等を円滑に進めるなどし,株主を巻き込んだ債務者の支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したものと一応推認するのが相当である。そして,このような目的は,会社法が本来取締役会に新株発行権限を付与した趣旨とは異なるものである上,同目的のとおりに昭和シェルとの経営統合が成功した場合には,月岡社長ら債務者経営陣に取締役としての善管注意義務違反があったとしても,債務者の株主からの責任追及を受ける可能性を低下させるものであることからすると,一種の権限濫用行為を誘発する不当な目的であるというべきである。

ウ もっとも,本件新株発行は公募増資の方法により行われるものであることは前記前提事実記載のとおりであるところ,一般論として,①公募増資においては,割当先が取締役の意思とは無関係に決定され,割当先が取締役の意向に沿って議決権を行使する保証はないこと,②取締役に反対する株主や第三者も株式の割当を受ける可能性があること,③取締役に反対する株主が,公募増資後,株式市場に売りに出された株式を取得する可能性も否定できないことからすると,第三者割当増資の場合に比して,取締役に反対する株主らの支配権を減弱させる確実性は弱いものと考えられる。また,一件記録を精査しても,本件新株発行後,直ちに株主総会が開催され,昭和シェルとの合併が特別決議事項として議題となることを窺わせる証拠はない。
そうすると,月岡社長ら債務者経営陣の全部又は一部には上記イ記載の目的が存在したものと一応推認されるものの,当該目的が本件新株発行の唯一の又は主要な目的であるか否かを判断するに当たっては,上記のような制約ないし事情を考慮する必要があるものというべきである。

(3) 債務者の資金調達の必要性・合理性
ア 債務者は,本件新株発行は債務者の財務体質改善等を目的とする旨主張し,①債務者はかねてより公募増資を実行しようとしていたが,環境等が整わなかったため実行できずにいたところ,原油価格の上昇や業績の向上もあって株価が高水準で推移するなど,公募増資に適した状況に至ったことから,平成29年2月に債務者内部での検討を開始し,同年4月からは引受証券会社等の第三者も関与した検討を行い,同年7月3日に本件新株発行の決議を行うに至ったこと,②本件新株発行による調達資金のうち522億2000万円を戦略投資に充て,残りを,平成29年12月18日弁済期が到来する昭和シェル株式取得のための本件ブリッジローン契約による借入金1590億円の一部の返済に充てる予定であることなどを主張する。

イ 【省略】
もっとも,前記(2)イにおいて認定・説示したとおり,月岡社長ら債務者経営陣の全部又は一部には,株主を巻き込んだ債務者の支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したと一応認められるのであるから,債務者は本件新株発行計画の策定の経緯やその合理性につき十分な説明をする責務を負うというべきであって,前記のような一般的な財務体質改善の必要性や外的要因の存在のみをもって,債務者が本件新株発行により資金を調達する必要性・合理性があったということはできない。また,本件新株発行により調達した資金の使途について,引受審査資料(疎乙19)及び有価証券届出書(疎乙21)に債務者の主張に沿う記載があることは,前記認定事実記載のとおりであるが,それのみでは上記説明としては不十分である
そこで,債務者が主張する資金使途ごとに,本件新株発行によって資金調達をする必要性・合理性があるか否かを検討することとする。

ウ 債務者が主張する資金使途ごとの検討
(ア) 戦略投資
a ニソンプロジェクト
【省略】
債務者は,さらに,同年内に予定されている商業運転開始までの試運転期間中は,運転資金を確保するために債務者らが出資及び貸付けを行う必要があるとして,本件新株発行による調達資金のうち142億円を,平成29年度中に実施予定の出資及び貸付けに充てる予定である旨主張する。しかし,現時点において,同合弁会社に対する出資及び貸付けを行う必要性や相当性に関する的確な証拠はなく,建設工事が完工した後に運転資金の供与が必要であることについての疎明もない。ひいては,上記出資及び貸付けのための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

b ベトナム石油販売事業(海外石油事業)
【省略】
債務者は,さらに,上記19億9100万米ドルの一部に充てるため,本件新株発行による調達資金のうち9億円を上記会社に貸し付ける予定である旨主張する。しかし,上記会社の4年間分の必要資金19億9100万米ドルの一部9億円(1年目及び2年目のプレ販売期間の出捐額と思われる〈疎乙22の1・11頁〉。)をこの時期にまとめて貸し付ける必要性に関する的確な証拠はなく,ひいては,上記貸付けのための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

c 愛知製油所C8スプリッター設置工事(国内石油事業)
【省略】
しかしながら,上記主張に関する客観的な疎明資料は提出されていない。のみならず,上記設備の建設は平成26年中に検討されていたのであるから,既に設備投資費用の調達方法等についても検討されているのが通常であると考えられるところ,本件新株発行によって調達した資金を同費用に充てる必要性や,誰がどのような検討を経てそのような結論に至ったのかについての主張立証はない。したがって,上記設備投資費用に充てるための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

d 出光ルブテクノインドネシア能力増強(高機能材事業)
【省略】
債務者は,さらに,本件新株発行による調達資金のうち63億円を上記子会社に対する出資又は貸付金に充てる予定であり,これは上記子会社の工場建設資金に充てられる予定である旨主張する。しかし,工場建設の正式承認に係る最終審議すら行われていない現時点において,本件新株発行により工場建設資金の全額を調達することの必要性・相当性は説明されておらず,ひいては,上記出資又は貸付けのための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

e 出光ルブインド能力増強(高機能材事業)
【省略】
債務者は,さらに,本件新株発行による調達資金のうち16億円を上記子会社に対する貸付金に充てる予定であり,これは同社の平成29年度から平成31年度までの設備建設資金に充てられる予定である旨主張する。しかしながら,現時点において,本件新株発行により平成31年度までの3年間の設備建設資金を一括して調達する必要性に関する的確な証拠はなく,ひいては,上記貸付けのための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

f 水添石油樹脂製造装置建設(海外化学品・高機能材事業)
【省略】
債務者は,さらに,本件新株発行による調達資金のうち25億円を上記合弁会社への出資金に充てる予定である旨主張する。しかしながら,上記のとおり,上記合弁会社は平成28年1月に設立済みであるにもかかわらず,平成29年7月に至ってなお,同社の出資金を債務者が出捐する必要性に関する的確な証拠はなく,ひいては,上記出資のための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

g 新規地熱事業地域の調査活動(再生エネルギー・電力事業)
【省略】
債務者は,さらに,本件新株発行による調達資金のうち28億円を地熱事業を行う地域の調査活動用機器等の設備投資資金に充てる予定である旨主張する。しかしながら,現時点において,本件新株発行により平成31年度までの期間中に支出する資金をまとめて調達する必要性に関する的確な主張立証はなく,ひいては,上記支出のための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

h 有機EL材料関連製造装置開発等(高機能材の研究開発等)
【省略】
債務者は,さらに,本件新株発行による調達資金のうち40億2000万円を有機EL材料製造等のための各種投資費用に充てる予定である旨主張する。しかしながら,現時点において,本件新株発行により平成31年度までの期間中に支出する予定の資金をまとめて調達する必要性に関する的確な証拠はなく,ひいては,上記支出のための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

i 電子材料研究開発(高機能材の研究開発)
【省略】
しかしながら,上記主張に関する客観的な疎明資料は提出されていない。のみならず,現時点において,本件新株発行により平成31年度までの期間中に支出する予定の資金をまとめて調達する必要性に関する的確な証拠はない。したがって,上記研究開発費用に充てるための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

j 固体電解質等の研究開発(高機能材の研究関連)
【省略】
しかしながら,上記主張に関する客観的な疎明資料は提出されていない。のみならず,現時点において,本件新株発行により平成31年度までの期間中に必要となる予定の資金を一括して調達する必要性に関する的確な証拠もない。したがって,上記各開発費用に充てるための資金調達を理由とする本件新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残るといわざるを得ない。

(イ) 昭和シェル株式取得のための借入金の一部の資本への置換え
a 【省略】
b 【省略】
たしかに,前記認定事実によれば,債務者は当初,昭和シェルの株式取得資金を金融機関からの借入れによって調達する方針を立て,これを公表していたこと,本件劣後ローン契約は2度にわたって実行日が変更されたものの,結局,実行には至らなかったこと,債務者は,昭和シェルの株式を取得した後も,本件ブリッジローン契約に基づく借入金の借換資金を本件劣後ローン契約によって調達する予定であったことが一応認められる。
しかしながら,他方,他の資金調達手段が存在することから直ちに,本件新株発行による資金調達の必要性・合理性が失われるわけではない上,債務者が,本件ブリッジローン契約に基づく借入金の借換資金を本件劣後ローン契約によって調達するに至らなかった経緯をみても,債務者が借換えを意図的に行ったものとは考えられない。そして,本件ブリッジローン契約に基づく借入金の弁済期が平成29年12月18日に迫っていることからすると,債務者がその返済資金を用意する必要性は客観的に明らかである。
したがって,資金調達の必要性・合理性はあるものと一応認められるから,債権者らの主張は採用することができない。
【省略】

(4) 本件新株発行の主要な目的について
上記認定・説示によれば,本件新株発行については,月岡社長ら債務者経営陣の全部又は一部に,株主を巻き込んだ債務者の支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したものと推認される一方で,債務者には客観的な資金調達の目的も存在したものと認められ,両者は併存するものというべきである。
そこで,本件新株発行の主要な目的がいずれであるかについて検討するに,本件新株発行は証券会社が引き受ける公募増資の方法によるものであって,第三者割当増資の方法による場合に比して,取締役に反対する株主の支配権を減弱させる確実性は弱いものと考えられること(【省略】)に加え,本件新株発行後,直ちに株主総会が開催され,昭和シェルとの合併が議題になることを窺わせる証拠はないことは,前記認定・説示のとおりであり,債務者経営陣は,本件新株発行後,昭和シェルとの合併を前提とする経営統合の当否について株主がどのような意向を有しているかを確認することができるまでは,債権者らの反対を押し切って,昭和シェルとの合併承認議案を目的とする臨時株主総会を招集するなどの行動に出る可能性が高いとは認められない
他方,債務者が本件ブリッジローン契約に基づく借入金の弁済期を数か月後に控えていることは前記認定事実記載のとおりであり,それまでに返済資金を用意する必要性が高いことは,客観的に明らかである。
そうすると,本件新株発行の主要な目的が,客観的な資金調達の目的ではなく,債権者らと月岡社長ら債務者経営陣との間の債務者支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的であるとまで断ずるに足りる証拠はなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(5) 以上のとおり,本件新株発行の主要目的が不当なものであると認めるに足りる証拠はないから,本件新株発行が「著しく不公正な方法」により行われたものであるとの疎明があったともいえない。
したがって,本件においては,被保全権利の疎明がなかったことに帰する。

第4 結論
よって,その余の点について検討するまでもなく,本件申立ては理由がないからこれを却下することとし,主文のとおり決定する。

新株発行差止仮処分にかかる即時抗告の結果について

出光昭介氏、出光正和氏、出光正道氏、日章興産株式会社、公益財団法人出光美術館及び公益財団法人出光文化福祉財団(以下「抗告人ら」といいます。)は、出光興産による新株発行(以下「本件新株発行」といいます。)に関して、東京地方裁判所が7月18日に抗告人らによる差止めの仮処分の申立てを却下する旨の決定(以下「原決定」といいます。)をしたことに対して、原決定を取り消すことを求めて即時抗告の申立てを行っておりましたが、本日、東京高等裁判所において、即時抗告の申立てを棄却する旨の決定(以下「本決定」といいます。)が出されました。

原決定及び本決定は、いずれも、本件新株発行が抗告人らの議決権保有割合を希釈化する目的を主要な目的として行われるものであることを看過した不当なものであり、大変遺憾に思います。
ただ、本件新株発行について、出光興産経営陣に、支配権を巡る実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したと推認した点や、本件新株発行の資金使途に関する出光興産の主張の大部分について理由がないと判断した点では、当方の主張が認められております。

本件新株発行の差止めが認められなかったとしても、このような不当な株式発行を行う出光興産経営陣の責任は極めて重く、また、定時株主総会直後に騙し討ちのような形で本件新株発行を公表し、出光興産の株価も本件新株発行の公表直前から20%近く下落するなど、数多くの一般株主に犠牲を強いながら本件新株発行を強行することについては、株主との信頼関係を損なうものであって許されないと考えております。

抗告人らは、本件新株発行を計画し、実行しようとする出光興産経営陣に対して強く抗議し、今後も、昭和シェル石油との経営統合には断固として反対し続ける所存です。

新株発行差止仮処分命令申立のご連絡

出光興産株式会社が、7月3日開催の取締役会で決議した公募による新株式発行(以下「本件株式発行」といいます。)について、本日、東京地方裁判所に新株発行差止めの仮処分を申し立てましたので、ご報告いたします。
なお、本件の申立ての詳細について開示する予定はありませんので、ご了承ください。

出光興産による公募増資への対応について

本日、出光興産株式会社が、「公募による新株式発行に関するお知らせ」により、取締役会において、公募による新株式発行(以下「本件株式発行」といいます。)を決議した旨を公表しました。
公表された内容を確認いたしましたが、本件株式発行が創業家の保有する議決権比率を希釈化することを目的とすることは明らかですので、直ちに、株式発行の差止めの仮処分を申し立てる方針です。
なお、本件について記者会見の予定はありませんので、あらかじめご了承ください。

定時株主総会における質問と会社側の回答について

先日の定時株主総会では、残念ながら、提案された取締役候補者全員が選任される結果となりました。株主総会における質問への経営陣からの回答を聞いていても、創業家側の懸念・疑問に対して何ら納得の得られる回答はなく、創業家としては、今後の出光興産の経営に対して、強い危惧感を持たざるを得ません。創業家は、経営陣が更なる不当な職務執行を行うことがないように、監視していきたいと考えています。
また、今回、取締役候補者全員が選任されたことは、石油価格の上昇と円高によって業績が好調であったことが主たる要因ですので、昭和シェル石油との経営統合を行う経営陣の方針が支持されたということではありません。
今回、株主や販売店の皆様に対して取締役選任議案への反対を呼びかけたところ、創業家の考えを理解し、支持する声が数多く寄せられ、大変心強く感じました。創業家としては、何としても、昭和シェル石油との経営統合を阻止しなければならないと、決意を新たにした次第です。
昭和シェル石油との経営統合の撤回を目指して、創業家は引き続き活動を続けて参る所存です。今後とも、創業家の活動に、ご理解・ご支援のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
定時株主総会における創業家側の質問とそれに対する経営陣の回答の概要を以下に掲載いたします。また、その他の株主の方からの質問とこれに対する経営陣の回答のうち、特に重要だと思われるものについても、後日、本ウェブサイトに掲載する予定です。

1 昭和シェルとの経営統合

(1)昭和シェル石油の太陽電池事業

【質問】
昭和シェルの太陽光を中心としたエネルギーソリューション事業は、昨期に107億円の減損損失を計上し、91億円の営業赤字となっています。そして、本年3月までの第一四半期には、売上高が前年同期比で41.3%減収となった結果、今期は最初の四半期だけで既に30億円の営業赤字となっております。このとおり、昨期の減損処理によって赤字の打ち止めとなっていない状況です。
そこでお伺いしますが、国内の石油業界の先行きを懸念してM&Aによる積極展開が必要と考えるのなら、このように事業の多角化に失敗している会社とは、対等の精神による経営統合はおろか、そもそも一緒になるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

【経営陣回答】
ご指摘のとおり、太陽電池事業は世界的に供給過剰状態が続いており、従来の戦略では短期的に収益を回復することは難しいという認識の下、昨年の決算において、パネル工場で107億の減損損失を計上された。現在、事業の再構築に取り組んでいる。2017年以降の太陽電池事業の戦略について大きく2つのポイントがあり、1つは、付加価値を獲得できるセグメントに経営資源を投入すること、もう1つは、CIS電池で競合する多結晶シリコン型の太陽電池に対する差別化戦力を進めることである。
今年、第1四半期で30億の赤字だというご指摘があったが、通年ベースでの昭和シェルのエネルギーソリューション事業部門の収支見込みは、昨年のマイナス91億赤字から、今年はプラマイゼロまで回復する見込みと聞いている。
もともと昭和シェルとの経営統合については、国内石油事業の基盤強化を狙いとしたものである。また、製油所立地についても互換関係にあって、物流最適化が期待できる。
当社と昭和シェルはシナジーを年間ベースで500億円創出し、業界のリーディングカンパニーを目指している。そういう意味では、昭和シェルは経営統合のパートナーとして最適と考えている。

(2) サウジアラムコとの関係

【質問】
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、昭和シェル石油の株式15%を保有し、仮に出光興産と昭和シェルが経営統合を行った場合もこれまでどおり株式を保有し続けるようです。アラムコは1991年以降、韓国の民間石油会社Sオイルに34.99%出資しておりましたが、2014年7月に韓進グループより株式を追加取得し、現在は63.99%を出資するSオイルの筆頭株主として、サウジアラビア人のCEO(社長)を送り込んでいます。現在、Sオイルが輸入する原油はサウジアラビア産のみです。出光佐三店主が国際石油資本(セブン・シスターズ)による市場の支配を打破し、消費者がより良い条件で石油を入手するようにしたいという思いと、国際石油資本に依存せず石油を安定供給しなければならないという思いから出光興産を民族資本の会社として守ってきた理念は、経営陣、社員、販売店が一体で事業を行い、消費者の皆さまから信頼と支持を得てきた出光の大きな強みであります。
しかし、新セブン・シスターズの一番手であるサウジアラムコの資本を受け売れることは、その理念を否定するものと考えます。サウジアラムコが将来、統合会社での出資比率を高めて、サウジアラビア人CEO・社長を送り込み、サウジアラビア産原油の購入比率を高めてくることを要求することは容易に想像できます。統合後のサウジアラビアにはサウジアラムコから役員を受け入れる予定か、お伺いいたします。

【経営陣回答】
サウジアラムコ社が現在、昭和シェル石油の株主であることは間違いないが、その後、経営統合後の新会社の株主になるか否かということは、決まっていない。仮に新会社の株主になった場合に役員を受け入れるかどうかについても、まだ話合いもしていない。
この点については、我々は、サウジアラムコは産油国だというふうに認識しており、佐三店主が国際メジャー資本といったところとはまったく違うところのものだというふうに受け止めている。店主の言葉の中にも、我々は産油国から直接原油購入をしていく、国際石油メジャーを経由しない買い方をして、ある意味では産油国は出光の生産者であると、話もされていた。我々としては、これからも日本の90%以上を供給している中東産油国の1国の産油国として適切な関係を保っていくべきだと思っている。
また、日本には重要なインフラ産業においては外資規制があり、経産省等の指導が入る対象になっているので、メジャーのシェアを上げるということは考えられないと思っている。

(3) 経営統合によるシナジーについて

当社は、経営統合によって5年以内に500億円のシナジーを達成することを目指すとしていますが、5月9日に公表された昭和シェルとの事業提携によっては、3年以内に250億円のシナジー創出を目指すとしています。具体的な期間及び金額まで挙げている以上は、達成が不可能あるいは困難と見込まれる場合には、事業提携を解消し、経営統合も撤回すべきことは当然のことでしょうし、途中経過も含め、検証を行い、公表すると理解しています。
そこでお伺いするのは、残りの250億円についてです。この経営統合のシナジーについて、どのように達成するつもりなのか、具体的な積算根拠を明らかにしてください。積算根拠を明らかにする上では、人員削減やサービスステーションの統廃合による効果が含まれているか否か、また、製油所の統廃合による効果が含まれているか否かそれぞれ明らかになる形でお願いします。

【経営陣回答】
5月9日に発表した事業提携によるシナジーの250億円以上というのは、統合前でも実施可能な案件に限定している。
合併時には、本社及び間接部門を一体化するなど、全ての分野で制約なくシナジーを追求する。このことによって残り250億を達成していきたい。これ以上の詳細の内容については、昭和シェル石油との守秘義務があり、回答は控えさせていただきたい。
人員については、勇退による自然減だけを含んでいるが、早期勇退等を会社から働き掛けるということについては一切、考えていない。サービスステーション(SS)の統廃合については、もともとSSは、販売店・特約店が運営しており、元売りである当社が主体的に指導するものではない。
なお、シナジーについては今後、決算発表の機会等を利用して、適宜、進捗を報告させていただく予定である。

(4) 経営統合のために要した費用

昭和シェル株式の取得や経営統合のために当社が支払った費用は、多額に上っているはずです。すなわち、同株式の取得のための借入れに関して支払った利息、株式取得に要した手数料、各種専門家やコンサルタントの費用などが支出されたはずです。
また、昭和シェルとの合併が当初公表された計画から遅延することにより費用が増大しているはずです。すなわち、予定していた新社屋に関して支払った敷金、保証金、賃料、これの解約に伴う違約金や原状回復費用も無駄となっているはずです。そして、株式取得資金に関する融資の借換えや条件変更に伴う支払利息、各種専門家に対する費用も著しく増大していると思われます。
そこでお伺いしますが、このように、昭和シェルとの経営統合のために当社が支払った費用と、合併が当初計画から遅延することにより発生した費用について、具体的内訳とともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
経営統合関連に要した費用等に関するご質問については、内容の回答を控えさせていただきたい。
現在、帝国劇場ビルに入っているが、業容の拡大に伴い手狭になり、近隣のオフィスと分散している状況である。統合を機に本社を一体化しようと考え、準備を進めていたが、統合時期が未定になったことから計画を白紙に戻した。コミュニケーション上、オフィスの分散は決して好ましいことではないので、統合を通じていち早く本社を一体化したいと考えている。

2 海外事業における損失

(1) これまでの海外投資に関する責任の所在

海外事業は、その投資額が巨額になることに加えて、多くのリスクを抱えるものであり、現に近時、海外投資の失敗が経営に大きなダメージを与えている他社の事例もあります。当社が同じ轍を踏まないようにするためには、これまで行ってきた海外事業に関する失敗について、早期に経営陣が責任をとり、立て直しを図るべきであると考えます。
まず、北海油田に関しては、2年にわたり、数百億円ずつの減損損失を計上しており、今後、廃坑するとなれば、さらに多額の費用を要するはずです。
また、カナダLNG事業については、有価証券報告書に、当面実施を見合わせることとなりましたとの記載がある上、当社内のガス事業室も解体されたようですので、減損処理を行うべき状況にあるのではないかと思いますが、現時点で減損処理を行ったとの情報は公表されていません。
そこでお伺いしますが、北海油田及びカナダLNG事業につきどれだけの損失が累計で見込まれおり、それにつき経営陣は責任をどのように取るべきと考えているのか、明らかにしてください。なお、累計の損失を明らかにする上では、計上済と未計上の別及び北海油田の廃坑のため今後かかると予想される費用が明らかになるようにご回答ください。

【経営陣回答】
過去の原油価格の推移をみると、2014年年央から急激に下落をしている。そのため、石油開発関連企業全50社のデータを取っているが、2014年及び2015年の2年で1兆1,000億という多額の減損損失を計上している。当社も同期間で、資源部門で839億円の減損を計上している。
その後、投資を抑制しつつ、また低価格の中でも利益が出るようなコスト構造を作り出し、2016年、2017年は一定の収益を上げるレベルまで回復した。廃坑費については、当社の3月末の貸借対照表に、資産除去債務として781億円を計上している。本来、減損処理すべきものを未処理にしているということはない。
LNGプロジェクトについては、日本のエネルギーセキュリティーの向上に貢献することができるという観点から、可能性を鋭意検討してきたが、原油価格同様、ガス価格も下落したために、大型の投資をするタイミングではないということで見送っている状況にある。したがって、減損処理が発生するような投資を行っていないため、減損も生じていない。
また、ガス事業室が解体したというご指摘があったが、これは解体したわけではない。国際需給部を需給部と海外部の2つに分けて、その海外部とガス事業室を一体にする組織変更である。

(2) ベトナムニソン製油所関係①

ベトナムのニソン製油所プロジェクトについては、総投資額90億ドルのうち、当社が約14億ドルという巨額の投資を行っているとされています。そのため、失敗によるリスクも大きくなると懸念されますが、既に運転開始が遅れると報じられています。
また、有価証券報告書によれば、当社グループは銀行団に対し建設完工までの債務保証を行っており、計画どおりに建設工事が完了しないなどの場合には、保証の実行により当社グループの業績は影響を受けることとなります。
そこでお伺いしますが、既に少なくとも半年程度運転開始が遅れるということであるにも拘わらず、業績に影響がないというが、それはなぜなのか、理由を明らかにしてください。その際には、今後さらに半年程度を越えて運転開始が遅れる見込みの有無も明らかにしてください。

【経営陣回答】
ニソンプロジェクトに関しては、この4月に機械的完工しており、現在、試運転のフェーズに移行している。したがって、完工しないというリスクは既にない。2017年中には商業運転を開始する予定であり、現時点でさらに運転開始が遅れるとは想定していない。
業績への影響については、もともと運転開始当初の稼働率が低いと極めて保守的に見積もっていたものであり、若干の遅れによる影響はほとんどないと判断している。また、ニソン製油所が今後稼働する期間を考えると、投資回収の面でも影響は軽微であると考えている。

(3) ベトナムニソン製油所関係②

4月積みのクウェート原油価格と原油タンカー運賃の市況、ベトナムでの国内石油製品市況を前提として、ニソン製油所におけるリファイナリーマージンはいくらになる見込みか、投資回収にどの程度の期間がかかることを見込んでいるのか、明らかにしてください。その際には、リファイナリーマージンに関する各種データ、ベトナム国内の石油の長期需要見通し、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の普及見込みとともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
リファイナリーマージンあるいは回収期間等については、合弁に関する守秘義務があるため、回答できない。なお、当社の投資審査基準を満たした上で意思決定をしている。
ベトナムの需要については、2016年で日量45万5,000バレルであるが、2020年には日量60万バレルまで拡大する予定である。それに対する国内の生産状況は、現在、ズンクワット製油所のみであり、これが日量14万8,000バレルで稼働しているので、2016年においても30万バレルほど国内の生産量が不足している状況である。したがってこの部分は海外からの輸入に依存している状況である。この30万バレルのうち、今回、ニソン製油所が20万バレルの不足を補う形になる。
電気自動車等の普及状況については、ベトナム国内のデータは見つからなかった。ただ、石油製品の行き先、売り先に困るということはないということが申し上げられると思う。

3 相談役制度

中野相談役は会長と相談役を通算で4年、天坊相談役は会長と相談役を通算で8年という長い期間務めており、著しく高額な報酬を支払うのみならず、それぞれに、自室を与え、秘書も付けるなど、破格な待遇を与えていると聞いています(注)。
そこでお伺いいたしますが、それら相談役は、それぞれ、週に何度出勤し、どのような業務を行っており、その報酬につき、どのような根拠で算定しているのでしょうか。業務内容に照らし、待遇が適正と考えているのかとともに、明らかにしてください。
【経営陣回答】
相談役の業務内容は、これまでの経験、知見、それから石油業界あるいは産油国との人脈等、幅広いものを持っているため、これを生かした情報収集によって会社に助言をいただいている。
報酬に関しては、相談役の役割あるいは貢献を踏まえて、一般産業の業界水準というものに照らして決めており、適切なものと考えている。個別の報酬、待遇についてはお答えすることはできない。
なお、相談役については本年6月末をもって廃止を決定している。今後は、社内外を問わず、経験、知見を持たれる方を会社が必要ということであれば、社外取締役・社外監査役で構成する指名・報酬諮問委員会の方針を踏まえて取締役会で決定した上で顧問の登用をすることになる。

(創業家注)なお、株主総会の場では、相談役の報酬について、当方が把握している具体的な金額を挙げてその金額が正しいか否かを問いましたが、経営陣はその金額が正しくないと答えました。この回答の真偽については、会計帳簿の閲覧請求を行うこと等によって、検証する所存です。

4 労務管理

今年6月12日、北海道製油所で定期補修工事を請け負った協力会社の社員の方が亡くなったという報道がありました。
出光全体では、2014年度から16年度までの3年間に何名の現役社員が亡くなり、それぞれの死因ならびに原因は何ですか?特に、北海道製油所では、この1年間で少なくとも2名の現役社員の自殺があったと聞いていますが、重要な問題だと思いますので、これが事実かどうか明らかにする形でお答えください。

【経営陣回答】
この3年間、2014年から2016年にかけて、29名の現役の方が亡くなられている。
社員の死因、原因についてのご質問については、個人のプライバシーに関係するため回答は差し控えさせていただく。

5 石油製品卸価格の決定方法

石油製品に関する、陸上RIMによる価格指標ですが、業転価格の影響を受けて、原油コストを反映しないものとなってしまい、事後調整が行われるのがこれまでの商慣習だったかと思います。
しかし、プラッツ社が公表する価格を価格指標とする見直しの動きがあり、また、事後調整については廃止の動きがあると報道されています(2016年7月14日日本経済新聞報道)。
また、報道によりますと、当社は、元売り業者で唯一、既に石油の現物市場に参入し、今後も不足分を市場で調達するとしていますが(2017年3月16日日本経済新聞報道)、このような石油製品の調達方法は割高なはずです。
そこでお伺いしますが、そのように割高な価格で調達した石油製品を販売することによって、販売店に不利益が生ずるのではないでしょうか。このような、割高な石油製品の調達方法を採用した理由とともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
(本間執行役員国際需給部長)
国内の卸市場マーケットは、残念ながら今までは透明性が保たれていないという指摘を関係各機関から受けていたが、昨年から海外のPRAという情報機関、これは公認もされている機関でプラッツ社というものだが、これが日本の市場に参入した。情報機関が複数社できたことにより、価格の透明性が大変高まってきていると考えている。
石油のマーケットはご承知のとおり、国際マーケットに委ねられている。原油の価格は全て海外の市場と一体となって動いている。この透明性ある価格を国内のマーケットの価格に参照をしているということは当然の流れだというふうに考えている。その中で日本の石油産業が、シンガポールや韓国等の石油会社と競争して、最適な供給体制、価格をつくりだし、それで皆さま方に低廉な価格で安定的に供給をしていく、こういう仕組みがようやく日本の社会でも徐々に整ってきていると考えている。
当社は不足する製品を卸市場で調達をすることが割高になるのではないかというご指摘であったが、当然、製品はマーケットによって価格が決まる。割高な製品は購入しない。適切なマーケットで評価されたものを購入していく。そして、販売店、特約店等々に販売する価格については、コストが高い安いではなく、競争力ある価格で仕入れができるようなことを常に努力してまいりたい。したがって、必ずしも割高になるということではないと考えている。

(月岡社長)
ようやく日本においてもきちんとした製品卸市場の需給が反映されたマーケットプライスを発表する機関ができ、また、TOCOMにおいても、現物市場、スワップ市場も機能し始めた。これにより、極端な業転価格の安いものが出回る仕組みが、なくなってきたと思う。これは、裏返せばマーケットで公正な中での競争を促したということであり、精製・元売も、また特約店、販売店もこれからもコスト競争をベースとした競争はある。ただし、正しい公平な中での競争だということなので、この点については、出光グループは相当、今までの努力をしてきたので、非常に有利に働くはずだと私は確信をしている。

第102回定時株主総会に対する事前質問のご報告

創業家代理人弁護士の鶴間が、本日、出光興産の代理人弁護士を通じて、出光興産に対し、下記の事項につき、今月29日に予定されている出光興産の第102回定時株主総会において創業家側が予定している質問事項として、事前に通知しましたので、本サイトでも公表させて頂きます。

1 昭和シェル石油との経営統合関連

(1) 昭和シェル石油の太陽電池事業

昭和シェル石油の太陽光を中心としたエネルギーソリューション事業は、昨期に107億円の減損損失を計上し、91億円の営業赤字となったが、本年3月までの第一四半期には、売上高が前年同期比で41.3%減収となった結果、今期は最初の四半期だけで既に30億円の営業赤字となっており、昨期の減損処理によって赤字の打ち止めとなっていない。
国内の石油業界の先行きを懸念してM&Aによる積極展開が必要と考えるのなら、このように事業の多角化に失敗している会社と一緒になるべきではないのではないか。

(2) サウジアラムコとの関係

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、昭和シェル石油の株式15%を保有し、仮に出光興産と昭和シェルが経営統合を行なった場合もこれまで通り株式を保有し続けるようである。
アラムコは、1991年以降、韓国の民間石油会社Sオイルに34.99%出資していたが、2014年7月に韓進グループより株式を追加取得し、現在は63.99%を出資するSオイルの筆頭株主としてサウジアラビア人CEO(社長)を送り込んでいる。現在、Sオイルが輸入する原油はサウジアラビア産のみである。
出光佐三店主が、国際石油資本(セブンシスターズ)による市場の支配を打破し、消費者がより良い条件で石油を入手できるようにしたいという思いと国際石油資本に依存せず石油を安定供給しなければならないという思いから、出光興産を民族資本の会社として守ってきた理念は、経営陣・社員・販売店が一体で事業を行い、消費者の皆様から信頼と支持を得てきた出光の大きな強みである。しかし、新セブンシスターズの一番手であるサウジアラムコの資本を受け入れることは、その理念を否定するものと考える。アラムコが将来、統合会社での出資比率を高めて、サウジアラビア人CEOを送り込み、サウジアラビア産原油の購入比率を高めることを要求してくることは容易に想像できる。
そこで、統合後の新会社には、サウジアラムコから役員を受け入れる予定か、明らかにされたい。

(3) 経営統合によるシナジーについて

経営統合によって5年以内に500億円のシナジーを達成することを目指すとしているが、5月9日に公表された昭和シェルとの事業提携によって3年以内に250億円のシナジー創出を目指すとしている。具体的な期間及び金額まで挙げている以上は、予期されたシナジーを達成することができなかった場合又は達成することができないことが見込まれる場合には、事業提携を解消し、経営統合も撤回すべきことは、当然である。実際にそのような効果を上げているか否かについては、途中経過も含め、検証を行い、公表すると理解している。
以上を前提として、事業提携による250億円以外の残る250億円については、どのように達成するつもりなのか、具体的な積算根拠を明らかにされたい。なお、積算根拠を明らかにする上では、経営統合によるコスト削減効果として安易に見積もることができる人員削減及びサービスステーションの統廃合による効果が含まれているのか否か、また、製油所の統廃合による効果が含まれているのか否か、それぞれ明らかになる形で行われたい。

(4) 経営統合のために要した費用

昭和シェル石油株式の取得及び昭和シェル石油との経営統合のために貴社が支払った費用は、同株式の取得のための借入れに関して支払った利息、株式取得に要した手数料、各種専門家やコンサルタントの費用等、多額に上っていると思われる。また、それのみならず、昭和シェル石油との合併が当初公表された計画から遅延することにより、予定していた新社屋に関する契約に基づき支払った敷金、保証金、賃料並びにこれの解約に伴う違約金及び原状回復費用も無駄となっており、株式取得資金に関する融資の借換えないし借入条件の変更に伴う支払利息や、各種専門家やコンサルタント費用も著しく増大していると思われる。
そこで、昭和シェル石油との経営統合のために貴社が支払った費用及び合併が当初計画から遅延することにより発生した費用、並びにこれらの具体的内訳について明らかにされたい。

2 海外事業における損失

(1) これまでの海外投資に関する責任の所在

北海油田に関しては、多額の損失が既に発生しているようであるが、今後、廃坑するとなれば、さらに多額の費用を要するはずである。北海油田の権益を取得し、ここまで維持し続けた投資判断の誤りについて、経営陣には、明らかに責任がある。また、カナダLNG事業については、平成28年3月期有価証券報告書に、「カナダのアルタガス社(AltaGas Ltd.)と共同出資で設立したAltaGas Idemitsu Joint Venture Limited Partnershipによる北米のLNG(液化天然ガス)のアジア向け輸出の事業化については当面実施を見合わせることとなりました。」との記載がある上、出光興産内のガス事業室も解体されたようである。このような状況にある以上、減損処理を行うべき状況にあると思われるが、現時点で減損処理を行ったとの情報は公表されていない。
いったい、計上済・未計上の損失をあわせて、北海油田及びカナダLNG事業につきどれだけの損失が累計で見込まれているのか、明らかにされたい。なお、累計の損失を明らかにする上では、計上済と未計上の別及び北海油田の廃坑のため今後かかると予想される費用を明らかにして行われたい。

(2) ベトナムニソン製油所関係①

ベトナムのニソン製油所プロジェクトについては、総投資額90億ドルのうち、出光興産が約14億ドルという巨額の投資を行っているとされるため、その失敗によるリスクも大きくなることが懸念されるところ、既に運転開始が遅れることが報じられている。平成28年3月期有価証券報告書によれば、ベトナムのニソン製油所プロジェクトについて、出光興産グループは銀行団に対し建設完工までの債務保証を行っており、計画どおりに建設工事が完了しない場合、又は建設工事の完了後に設備が一定の条件で稼働することができない場合には、保証の実行により出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があるとされている。
既に少なくとも半年程度運転開始が遅れるということであるにも拘わらず、業績に影響がないというが、それはなぜか。今後さらに半年程度を越えて運転開始が遅れる見込みの有無とともに明らかにされたい。

(3) ベトナムニソン製油所関係②

ベトナムの製油所建設に関し、4月積みのクウェート原油価格と原油タンカー運賃の市況、ベトナムでの国内石油製品市況を前提とした場合のリファイナリーマージンはいくらになる見込みか、投資回収にどの程度の期間がかかることを見込んでいるのか。リファイナリーマージンに関する各種データ、ベトナム国内の石油の長期需要見通し及び電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の普及見込みとともに明らかにされたい。

3 労働問題

今年6月12日、北海道製油所で定期補修工事を請け負った協力会社の社員の方が亡くなったという報道があったが、労務管理が適切になされているかについて質問する。
出光全体では、2014年度から16年度までの3年間に何名の現役社員が亡くなり、それぞれの死因ならびに原因は何か、明らかにされたい。特に、北海道製油所では、この1年間で少なくとも2名の現役社員の自殺があったと聞いているが、重要な問題であるので、これが事実かどうか明らかにする形で回答されたい。

4 相談役制度

中野相談役は会長と相談役を通算で4年、天坊相談役は会長と相談役を通算で8年という長い期間務めているが、現在でも、これらの相談役に極めて高額の報酬をはじめとする破格な待遇を与えていると聞いている。
それら2人の相談役は、それぞれ週に何度出勤し、どのような業務を行っており、その報酬につき、どのような根拠で算定して、いくらを支払っているのか。業務内容に照らし、待遇が適正と考えているのか、及び、報酬以外の待遇とともに、明らかにされたい。

会社側代理人との面談のご報告

6月21日に、創業家代理人弁護士の鶴間が、6月29日の出光興産定時株主総会に関して、会社側代理人弁護士と面談しましたので、ご報告致します。
今後とも出光の理念を守り後世に引き継ぐための活動に、ご理解・ご支援のほど宜しくお願い申し上げます。

出光昭介手記(週刊現代6月24日号掲載)

※以下は、週刊現代6月24日号に寄稿した出光昭介の手記ですが、週刊現代編集部のご承諾を頂いて転載させて頂くものです。週刊現代のサイトはこちら

 出光興産と昭和シェル石油との経営統合をめぐってお騒がせしておりますことについて、まずは心よりお詫び申し上げます。
 私としては、この経営統合には反対であり、その気持ちが変わることはありません。経営統合に反対する理由については、これまで、私の代理人の鶴間弁護士から様々な形ですでに説明してもらっておりますが、今回、このような機会を頂きましたので、改めて、これまでの経緯を振り返るとともに、私なりの言葉で、なぜ経営統合に反対しているのかということについて、述べることとしたいと思います。

 私の父の出光佐三は、戦後、日本の石油元売各社が、国際石油資本の傘下に入る中、出光興産が民族資本の石油元売会社であることにこだわり続けました。そのために、筆舌に尽くしがたい多くの苦難があり、事業存続の危機を迎えたこともありましたが、社員・販売店と一体となってこれを乗り越えてきました。
 父が、出光興産が民族資本の会社であることにこだわったのは、国際石油資本による市場の支配を打破し、消費者が、よりよい条件で石油を入手することができるようにしたいという思いとともに、国家のエネルギー政策上も、国際石油資本に依存せずに石油を供給することができるようにしなければならないという思いがあったからです。父は、自社の利益だけではなく、常に、消費者や国家のことを考えて事業を行ってきました。そして、父は、何があっても、この理念を変えることはしませんでした。出光興産はこのような父の理念を受け継いで、これまで事業を営んできたわけです。父の理念は、「人間尊重」「独立自治」「消費者本位」といった様々な言葉で受け継がれ、今もなお、出光興産の理念として生き続けています。
 私は、この出光興産の理念を守り続けなければならないという強い思いを持っております。しかし、誤解をしていただきたくないのは、決して理念を守ることだけを目的として、経営統合に反対しているわけではありません。出光興産は、その理念こそが強みであります。出光興産がここまで成長することができたのは、経営陣・社員・販売店が理念を共有し、一体となって事業を行うことができたからです。そして、出光興産の理念に社会から共感、評価を得られたことが、消費者の皆様からの出光興産の支持につながっていると考えています。これを失ってしまっては、出光興産が社会から評価される会社であり続けることは難しく、他の会社との差別化を図ることもできないと考えるわけです。今般、石油市場の縮小への対応が、経営統合の理由とされているようですが、だからといって、出光興産が理念を捨て、自己否定をしてしまうと、取り返しのつかない損失が発生すると考える次第です。

 昭和シェル石油との件について、私が最初に話を聞いたのは、平成27年の夏のことでした。そのときは、昭和シェル石油を飲み込む合併という話でしたので、とりあえず様子を見ましょうということを申し上げました。そして、その後特に話がなかったのですが、突然、同年11月に出光興産と昭和シェル石油が対等の精神で経営統合をすることになったと知り、大変驚きました。会社側は、経営統合を一旦了承していた私が、途中で心変わりをして反対し始めたかのような説明をしているようですが、それはまったく事実に反しています。
 経営統合の話を聞いて、私はすぐに、月岡社長に、経営統合に反対であるという書簡を送ったのですが、実際に月岡社長と面談するまでには、かなりの時間を要しました。その後も、月岡社長以下の経営陣が、私たち創業家の経営統合への反対の意見に対して、真摯に向き合っていたとは思えません。経営統合が決まるまでに、私たち創業家の話をしっかりと聞いてもらう機会があれば、このような大事にはならなかっただろうと思いますので、そのことが残念でなりません。

 私が昭和シェル石油との経営統合に反対する理由は、鶴間弁護士から会社に伝えてもらっているように、大きく3つあります。
 第一に、出光興産と昭和シェル石油の体質・社風の違いです。民族資本の会社として独自の理念を大事にして事業を行ってきた出光興産と、国際石油資本の一つであるシェルの傘下で事業を行ってきた昭和シェル石油は、その体質や社風が大きく異なっており、両社を融和させるのには非常に大きなエネルギーを要します。そのことを考えると、経営統合をしたとしても、実際に成果を上げることは極めて困難です。また、経営統合によって実際に出光興産にメリットがあるのか不明ですから、経営統合にエネルギーを割くのではなく、出光興産がその理念を守り続ける形での事業を模索すべきです。
 第二に、経営統合によってサウジアラムコからの出資を受けることになる点です。石油利権を握る国際石油資本と一線を画してきた出光興産の歴史的意義を没却することになります。このことは、先に述べたような出光興産の強みを失わせるものであって、大きな損失をもたらすものと考えます。
 第三に、経営統合は生産者間の競争を減らすために行われるものであると考えられます。出光興産は、これまで消費者本位、すなわち、消費者の利益を第一に考えて事業を行い、また、事業を通じて社会に貢献することを目指してきたはずです。そうであるにもかかわらず、自社の利益を守るために、生産者間の競争を減らし、石油製品の価格を高止まりさせようとしているのは、大変残念ですし、消費者の理解を得られるものではないはずです。

 昭和シェル石油との経営統合が、出光興産の追い求めるべきものに反していることは、すでに述べたとおりですが、そのことを鶴間弁護士の前任者の時から再三会社に伝えてきたにもかかわらず、月岡社長以下の経営陣は、経営統合を行う考えを改めようとしてくれません。主要な株主が経営統合への反対を表明しており、経営統合に必要と思われる合併の承認を得られる見込みがないにもかかわらず、そのように経営統合に固執するのは、経営者として理解できません。
 月岡社長以下の経営陣がそのように経営統合に固執するのは、経営統合のため、市場価格を大幅に上回る価格で昭和シェル石油株式31・3%を取得してしまったからではないかと推測しています。
 確かに、いまさら昭和シェル石油との経営統合を止めれば、その取得した昭和シェル石油株式について、損失を出さずに処分するのは困難でしょうし、処分せずにそのまま塩漬けにするのは、会社資金に係る明らかな機会損失です。しかし、昭和シェル石油株式の取得費用は、すでに支払ってしまったものであり、それに囚われて、将来に向けてなすべき選択を誤るべきではありません。経営者は、「過ちを改むるに憚ることなかれ」でなければならないのです。月岡社長以下の経営陣が、もし昭和シェル石油株式につき責任を負うのを恐れて、経営統合を撤回できないのであるとすれば、経営者として明らかに失格です。

 6月29日に出光興産の定時株主総会が開催される予定です。先日、鶴間弁護士が記者会見で説明しましたとおり、私たち創業家は、月岡社長以下、5名の取締役候補の選任に反対することといたしました。私は、月岡社長ともかつて共に働いた関係にありますから、できる限り円満に解決したいという気持ちを持っており、そのように代理人にも伝えていましたので、今回、このような形をとらざるを得なくなったことは決して本意ではありません。
 しかし、私としましては、社員、販売店、株主の皆様にご迷惑をかけている状況が続くことを避けなければなりません。できるだけ円満な形で、話し合いによって出光興産と昭和シェル石油との経営統合を断念してもらえないかと模索してきましたが、現経営陣の考えには変化がないようですので、出光興産が速やかに新たなる途に進むべきであるという私の思いをより明確に伝える必要があると考えました。また、それ以外にも、海外事業の失敗が重なるなど、このまま現経営陣に出光興産の経営を委ねるわけにはいきません。そこで、今回、定時株主総会で取締役候補の一部の選任に反対することとした次第です。

 以上、私の考えを述べさせていただきましたが、一刻も早い事態の収束を願っております。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

会社側代理人との面談のご報告

6月14日に、創業家代理人弁護士の鶴間が、6月29日の出光興産定時株主総会に関して、会社側代理人弁護士と面談しましたので、ご報告致します。今後も、定時株主総会について、会社側代理人弁護士との面談を行うことを予定しておりますが、その都度、ご報告する予定です。
今後とも出光の理念を守り後世に引き継ぐための活動に、ご理解・ご支援のほど宜しくお願い申し上げます。