定時株主総会における質問と会社側の回答について

先日の定時株主総会では、残念ながら、提案された取締役候補者全員が選任される結果となりました。株主総会における質問への経営陣からの回答を聞いていても、創業家側の懸念・疑問に対して何ら納得の得られる回答はなく、創業家としては、今後の出光興産の経営に対して、強い危惧感を持たざるを得ません。創業家は、経営陣が更なる不当な職務執行を行うことがないように、監視していきたいと考えています。
また、今回、取締役候補者全員が選任されたことは、石油価格の上昇と円高によって業績が好調であったことが主たる要因ですので、昭和シェル石油との経営統合を行う経営陣の方針が支持されたということではありません。
今回、株主や販売店の皆様に対して取締役選任議案への反対を呼びかけたところ、創業家の考えを理解し、支持する声が数多く寄せられ、大変心強く感じました。創業家としては、何としても、昭和シェル石油との経営統合を阻止しなければならないと、決意を新たにした次第です。
昭和シェル石油との経営統合の撤回を目指して、創業家は引き続き活動を続けて参る所存です。今後とも、創業家の活動に、ご理解・ご支援のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
定時株主総会における創業家側の質問とそれに対する経営陣の回答の概要を以下に掲載いたします。また、その他の株主の方からの質問とこれに対する経営陣の回答のうち、特に重要だと思われるものについても、後日、本ウェブサイトに掲載する予定です。

1 昭和シェルとの経営統合

(1)昭和シェル石油の太陽電池事業

【質問】
昭和シェルの太陽光を中心としたエネルギーソリューション事業は、昨期に107億円の減損損失を計上し、91億円の営業赤字となっています。そして、本年3月までの第一四半期には、売上高が前年同期比で41.3%減収となった結果、今期は最初の四半期だけで既に30億円の営業赤字となっております。このとおり、昨期の減損処理によって赤字の打ち止めとなっていない状況です。
そこでお伺いしますが、国内の石油業界の先行きを懸念してM&Aによる積極展開が必要と考えるのなら、このように事業の多角化に失敗している会社とは、対等の精神による経営統合はおろか、そもそも一緒になるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

【経営陣回答】
ご指摘のとおり、太陽電池事業は世界的に供給過剰状態が続いており、従来の戦略では短期的に収益を回復することは難しいという認識の下、昨年の決算において、パネル工場で107億の減損損失を計上された。現在、事業の再構築に取り組んでいる。2017年以降の太陽電池事業の戦略について大きく2つのポイントがあり、1つは、付加価値を獲得できるセグメントに経営資源を投入すること、もう1つは、CIS電池で競合する多結晶シリコン型の太陽電池に対する差別化戦力を進めることである。
今年、第1四半期で30億の赤字だというご指摘があったが、通年ベースでの昭和シェルのエネルギーソリューション事業部門の収支見込みは、昨年のマイナス91億赤字から、今年はプラマイゼロまで回復する見込みと聞いている。
もともと昭和シェルとの経営統合については、国内石油事業の基盤強化を狙いとしたものである。また、製油所立地についても互換関係にあって、物流最適化が期待できる。
当社と昭和シェルはシナジーを年間ベースで500億円創出し、業界のリーディングカンパニーを目指している。そういう意味では、昭和シェルは経営統合のパートナーとして最適と考えている。

(2) サウジアラムコとの関係

【質問】
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、昭和シェル石油の株式15%を保有し、仮に出光興産と昭和シェルが経営統合を行った場合もこれまでどおり株式を保有し続けるようです。アラムコは1991年以降、韓国の民間石油会社Sオイルに34.99%出資しておりましたが、2014年7月に韓進グループより株式を追加取得し、現在は63.99%を出資するSオイルの筆頭株主として、サウジアラビア人のCEO(社長)を送り込んでいます。現在、Sオイルが輸入する原油はサウジアラビア産のみです。出光佐三店主が国際石油資本(セブン・シスターズ)による市場の支配を打破し、消費者がより良い条件で石油を入手するようにしたいという思いと、国際石油資本に依存せず石油を安定供給しなければならないという思いから出光興産を民族資本の会社として守ってきた理念は、経営陣、社員、販売店が一体で事業を行い、消費者の皆さまから信頼と支持を得てきた出光の大きな強みであります。
しかし、新セブン・シスターズの一番手であるサウジアラムコの資本を受け売れることは、その理念を否定するものと考えます。サウジアラムコが将来、統合会社での出資比率を高めて、サウジアラビア人CEO・社長を送り込み、サウジアラビア産原油の購入比率を高めてくることを要求することは容易に想像できます。統合後のサウジアラビアにはサウジアラムコから役員を受け入れる予定か、お伺いいたします。

【経営陣回答】
サウジアラムコ社が現在、昭和シェル石油の株主であることは間違いないが、その後、経営統合後の新会社の株主になるか否かということは、決まっていない。仮に新会社の株主になった場合に役員を受け入れるかどうかについても、まだ話合いもしていない。
この点については、我々は、サウジアラムコは産油国だというふうに認識しており、佐三店主が国際メジャー資本といったところとはまったく違うところのものだというふうに受け止めている。店主の言葉の中にも、我々は産油国から直接原油購入をしていく、国際石油メジャーを経由しない買い方をして、ある意味では産油国は出光の生産者であると、話もされていた。我々としては、これからも日本の90%以上を供給している中東産油国の1国の産油国として適切な関係を保っていくべきだと思っている。
また、日本には重要なインフラ産業においては外資規制があり、経産省等の指導が入る対象になっているので、メジャーのシェアを上げるということは考えられないと思っている。

(3) 経営統合によるシナジーについて

当社は、経営統合によって5年以内に500億円のシナジーを達成することを目指すとしていますが、5月9日に公表された昭和シェルとの事業提携によっては、3年以内に250億円のシナジー創出を目指すとしています。具体的な期間及び金額まで挙げている以上は、達成が不可能あるいは困難と見込まれる場合には、事業提携を解消し、経営統合も撤回すべきことは当然のことでしょうし、途中経過も含め、検証を行い、公表すると理解しています。
そこでお伺いするのは、残りの250億円についてです。この経営統合のシナジーについて、どのように達成するつもりなのか、具体的な積算根拠を明らかにしてください。積算根拠を明らかにする上では、人員削減やサービスステーションの統廃合による効果が含まれているか否か、また、製油所の統廃合による効果が含まれているか否かそれぞれ明らかになる形でお願いします。

【経営陣回答】
5月9日に発表した事業提携によるシナジーの250億円以上というのは、統合前でも実施可能な案件に限定している。
合併時には、本社及び間接部門を一体化するなど、全ての分野で制約なくシナジーを追求する。このことによって残り250億を達成していきたい。これ以上の詳細の内容については、昭和シェル石油との守秘義務があり、回答は控えさせていただきたい。
人員については、勇退による自然減だけを含んでいるが、早期勇退等を会社から働き掛けるということについては一切、考えていない。サービスステーション(SS)の統廃合については、もともとSSは、販売店・特約店が運営しており、元売りである当社が主体的に指導するものではない。
なお、シナジーについては今後、決算発表の機会等を利用して、適宜、進捗を報告させていただく予定である。

(4) 経営統合のために要した費用

昭和シェル株式の取得や経営統合のために当社が支払った費用は、多額に上っているはずです。すなわち、同株式の取得のための借入れに関して支払った利息、株式取得に要した手数料、各種専門家やコンサルタントの費用などが支出されたはずです。
また、昭和シェルとの合併が当初公表された計画から遅延することにより費用が増大しているはずです。すなわち、予定していた新社屋に関して支払った敷金、保証金、賃料、これの解約に伴う違約金や原状回復費用も無駄となっているはずです。そして、株式取得資金に関する融資の借換えや条件変更に伴う支払利息、各種専門家に対する費用も著しく増大していると思われます。
そこでお伺いしますが、このように、昭和シェルとの経営統合のために当社が支払った費用と、合併が当初計画から遅延することにより発生した費用について、具体的内訳とともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
経営統合関連に要した費用等に関するご質問については、内容の回答を控えさせていただきたい。
現在、帝国劇場ビルに入っているが、業容の拡大に伴い手狭になり、近隣のオフィスと分散している状況である。統合を機に本社を一体化しようと考え、準備を進めていたが、統合時期が未定になったことから計画を白紙に戻した。コミュニケーション上、オフィスの分散は決して好ましいことではないので、統合を通じていち早く本社を一体化したいと考えている。

2 海外事業における損失

(1) これまでの海外投資に関する責任の所在

海外事業は、その投資額が巨額になることに加えて、多くのリスクを抱えるものであり、現に近時、海外投資の失敗が経営に大きなダメージを与えている他社の事例もあります。当社が同じ轍を踏まないようにするためには、これまで行ってきた海外事業に関する失敗について、早期に経営陣が責任をとり、立て直しを図るべきであると考えます。
まず、北海油田に関しては、2年にわたり、数百億円ずつの減損損失を計上しており、今後、廃坑するとなれば、さらに多額の費用を要するはずです。
また、カナダLNG事業については、有価証券報告書に、当面実施を見合わせることとなりましたとの記載がある上、当社内のガス事業室も解体されたようですので、減損処理を行うべき状況にあるのではないかと思いますが、現時点で減損処理を行ったとの情報は公表されていません。
そこでお伺いしますが、北海油田及びカナダLNG事業につきどれだけの損失が累計で見込まれおり、それにつき経営陣は責任をどのように取るべきと考えているのか、明らかにしてください。なお、累計の損失を明らかにする上では、計上済と未計上の別及び北海油田の廃坑のため今後かかると予想される費用が明らかになるようにご回答ください。

【経営陣回答】
過去の原油価格の推移をみると、2014年年央から急激に下落をしている。そのため、石油開発関連企業全50社のデータを取っているが、2014年及び2015年の2年で1兆1,000億という多額の減損損失を計上している。当社も同期間で、資源部門で839億円の減損を計上している。
その後、投資を抑制しつつ、また低価格の中でも利益が出るようなコスト構造を作り出し、2016年、2017年は一定の収益を上げるレベルまで回復した。廃坑費については、当社の3月末の貸借対照表に、資産除去債務として781億円を計上している。本来、減損処理すべきものを未処理にしているということはない。
LNGプロジェクトについては、日本のエネルギーセキュリティーの向上に貢献することができるという観点から、可能性を鋭意検討してきたが、原油価格同様、ガス価格も下落したために、大型の投資をするタイミングではないということで見送っている状況にある。したがって、減損処理が発生するような投資を行っていないため、減損も生じていない。
また、ガス事業室が解体したというご指摘があったが、これは解体したわけではない。国際需給部を需給部と海外部の2つに分けて、その海外部とガス事業室を一体にする組織変更である。

(2) ベトナムニソン製油所関係①

ベトナムのニソン製油所プロジェクトについては、総投資額90億ドルのうち、当社が約14億ドルという巨額の投資を行っているとされています。そのため、失敗によるリスクも大きくなると懸念されますが、既に運転開始が遅れると報じられています。
また、有価証券報告書によれば、当社グループは銀行団に対し建設完工までの債務保証を行っており、計画どおりに建設工事が完了しないなどの場合には、保証の実行により当社グループの業績は影響を受けることとなります。
そこでお伺いしますが、既に少なくとも半年程度運転開始が遅れるということであるにも拘わらず、業績に影響がないというが、それはなぜなのか、理由を明らかにしてください。その際には、今後さらに半年程度を越えて運転開始が遅れる見込みの有無も明らかにしてください。

【経営陣回答】
ニソンプロジェクトに関しては、この4月に機械的完工しており、現在、試運転のフェーズに移行している。したがって、完工しないというリスクは既にない。2017年中には商業運転を開始する予定であり、現時点でさらに運転開始が遅れるとは想定していない。
業績への影響については、もともと運転開始当初の稼働率が低いと極めて保守的に見積もっていたものであり、若干の遅れによる影響はほとんどないと判断している。また、ニソン製油所が今後稼働する期間を考えると、投資回収の面でも影響は軽微であると考えている。

(3) ベトナムニソン製油所関係②

4月積みのクウェート原油価格と原油タンカー運賃の市況、ベトナムでの国内石油製品市況を前提として、ニソン製油所におけるリファイナリーマージンはいくらになる見込みか、投資回収にどの程度の期間がかかることを見込んでいるのか、明らかにしてください。その際には、リファイナリーマージンに関する各種データ、ベトナム国内の石油の長期需要見通し、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の普及見込みとともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
リファイナリーマージンあるいは回収期間等については、合弁に関する守秘義務があるため、回答できない。なお、当社の投資審査基準を満たした上で意思決定をしている。
ベトナムの需要については、2016年で日量45万5,000バレルであるが、2020年には日量60万バレルまで拡大する予定である。それに対する国内の生産状況は、現在、ズンクワット製油所のみであり、これが日量14万8,000バレルで稼働しているので、2016年においても30万バレルほど国内の生産量が不足している状況である。したがってこの部分は海外からの輸入に依存している状況である。この30万バレルのうち、今回、ニソン製油所が20万バレルの不足を補う形になる。
電気自動車等の普及状況については、ベトナム国内のデータは見つからなかった。ただ、石油製品の行き先、売り先に困るということはないということが申し上げられると思う。

3 相談役制度

中野相談役は会長と相談役を通算で4年、天坊相談役は会長と相談役を通算で8年という長い期間務めており、著しく高額な報酬を支払うのみならず、それぞれに、自室を与え、秘書も付けるなど、破格な待遇を与えていると聞いています(注)。
そこでお伺いいたしますが、それら相談役は、それぞれ、週に何度出勤し、どのような業務を行っており、その報酬につき、どのような根拠で算定しているのでしょうか。業務内容に照らし、待遇が適正と考えているのかとともに、明らかにしてください。
【経営陣回答】
相談役の業務内容は、これまでの経験、知見、それから石油業界あるいは産油国との人脈等、幅広いものを持っているため、これを生かした情報収集によって会社に助言をいただいている。
報酬に関しては、相談役の役割あるいは貢献を踏まえて、一般産業の業界水準というものに照らして決めており、適切なものと考えている。個別の報酬、待遇についてはお答えすることはできない。
なお、相談役については本年6月末をもって廃止を決定している。今後は、社内外を問わず、経験、知見を持たれる方を会社が必要ということであれば、社外取締役・社外監査役で構成する指名・報酬諮問委員会の方針を踏まえて取締役会で決定した上で顧問の登用をすることになる。

(創業家注)なお、株主総会の場では、相談役の報酬について、当方が把握している具体的な金額を挙げてその金額が正しいか否かを問いましたが、経営陣はその金額が正しくないと答えました。この回答の真偽については、会計帳簿の閲覧請求を行うこと等によって、検証する所存です。

4 労務管理

今年6月12日、北海道製油所で定期補修工事を請け負った協力会社の社員の方が亡くなったという報道がありました。
出光全体では、2014年度から16年度までの3年間に何名の現役社員が亡くなり、それぞれの死因ならびに原因は何ですか?特に、北海道製油所では、この1年間で少なくとも2名の現役社員の自殺があったと聞いていますが、重要な問題だと思いますので、これが事実かどうか明らかにする形でお答えください。

【経営陣回答】
この3年間、2014年から2016年にかけて、29名の現役の方が亡くなられている。
社員の死因、原因についてのご質問については、個人のプライバシーに関係するため回答は差し控えさせていただく。

5 石油製品卸価格の決定方法

石油製品に関する、陸上RIMによる価格指標ですが、業転価格の影響を受けて、原油コストを反映しないものとなってしまい、事後調整が行われるのがこれまでの商慣習だったかと思います。
しかし、プラッツ社が公表する価格を価格指標とする見直しの動きがあり、また、事後調整については廃止の動きがあると報道されています(2016年7月14日日本経済新聞報道)。
また、報道によりますと、当社は、元売り業者で唯一、既に石油の現物市場に参入し、今後も不足分を市場で調達するとしていますが(2017年3月16日日本経済新聞報道)、このような石油製品の調達方法は割高なはずです。
そこでお伺いしますが、そのように割高な価格で調達した石油製品を販売することによって、販売店に不利益が生ずるのではないでしょうか。このような、割高な石油製品の調達方法を採用した理由とともに明らかにしてください。

【経営陣回答】
(本間執行役員国際需給部長)
国内の卸市場マーケットは、残念ながら今までは透明性が保たれていないという指摘を関係各機関から受けていたが、昨年から海外のPRAという情報機関、これは公認もされている機関でプラッツ社というものだが、これが日本の市場に参入した。情報機関が複数社できたことにより、価格の透明性が大変高まってきていると考えている。
石油のマーケットはご承知のとおり、国際マーケットに委ねられている。原油の価格は全て海外の市場と一体となって動いている。この透明性ある価格を国内のマーケットの価格に参照をしているということは当然の流れだというふうに考えている。その中で日本の石油産業が、シンガポールや韓国等の石油会社と競争して、最適な供給体制、価格をつくりだし、それで皆さま方に低廉な価格で安定的に供給をしていく、こういう仕組みがようやく日本の社会でも徐々に整ってきていると考えている。
当社は不足する製品を卸市場で調達をすることが割高になるのではないかというご指摘であったが、当然、製品はマーケットによって価格が決まる。割高な製品は購入しない。適切なマーケットで評価されたものを購入していく。そして、販売店、特約店等々に販売する価格については、コストが高い安いではなく、競争力ある価格で仕入れができるようなことを常に努力してまいりたい。したがって、必ずしも割高になるということではないと考えている。

(月岡社長)
ようやく日本においてもきちんとした製品卸市場の需給が反映されたマーケットプライスを発表する機関ができ、また、TOCOMにおいても、現物市場、スワップ市場も機能し始めた。これにより、極端な業転価格の安いものが出回る仕組みが、なくなってきたと思う。これは、裏返せばマーケットで公正な中での競争を促したということであり、精製・元売も、また特約店、販売店もこれからもコスト競争をベースとした競争はある。ただし、正しい公平な中での競争だということなので、この点については、出光グループは相当、今までの努力をしてきたので、非常に有利に働くはずだと私は確信をしている。